運転中の「ながらスマホ」(JAFユーザーテスト)

テスト実施日・諸条件

実施日 2016年10月24日(月)
テスト場所 千葉県柏市「柏南自動車教習所」
テスト背景

スマートフォン(以下、スマホ)が普及している中、自動車を運転中のスマホ操作(いわゆる「ながらスマホ」)による事故やトラブルが社会問題になっている。
そこで、運転中の「ながらスマホ」の影響をテストし、その危険性を検証した。

  • 自動車運転中のスマホ操作は、道交法に触れる行為であるため、教習所のコースと教習車を使い、安全を考慮して助手席に補助ブレーキを踏めるスタッフを乗せて検証した。
テスト内容

自動車テスト

モニター※1にアイマークレコーダー(視線計測装置)※2を装着し、横からのボールの飛び出し、交差点での信号の変化など、いくつかの課題を設定したコースを「通常の運転」「メールアプリ使用」「ゲームアプリ使用」「ハンズフリー装置で通話」の4パターンで走行し、視線や運転の違いを比較検証した。

※1 モニターは、20代~50代の男女5名
※2 アイマークレコーダー(視線計測装置)とはカメラで眼球を捉え、見ている部分を可視化する装置
※3 「メールアプリ使用」と「ハンズフリー装置で通話」に関しては、質問に返信してもらいながらテストを行った

アイマークレコーダー装着イメージ

アイマークレコーダー映像イメージ

4パターン別に比較検証

本テストは、愛知工科大学工学部 小塚 一宏 教授監修のもと実施した。

「メールアプリ使用」と「ゲームアプリ使用」の特徴的なテスト結果

メールアプリ使用

飛び出してきたボールに衝突

信号無視

ゲームアプリ使用

停止線をオーバーして停止

ハンドル操作が不安定になり対向車線を走行

テスト結果

視線結果(4パターン別)

通常の運転

  • 視線は前方の広い範囲をしっかりと確認できている。

メールアプリ使用

  • 視線はスマホ画面と前方の狭い範囲しか確認していない。
  • 横からのボールの飛び出しにまったく気づかず衝突した。
  • 信号の見落としがあり、赤信号で通過した。

ゲームアプリ使用

  • 視線はスマホ画面と前方の狭い範囲しか確認していない。
  • 赤信号に気づくのが遅れ、停止線をオーバーして停止した。
  • 交差点で青信号になっても気づかず、発進が遅れた。
  • ハンドル操作が不安定になり、対向車線にはみ出した。

ハンズフリー装置で使用

  • 視線は通常の運転と同じような軌跡だが、前方を漫然と見ている「上の空」状態。
  • 横からのボールの飛び出しに対しブレーキが遅れ、かつブレーキペダルを強く踏むことができず衝突した。
  • ウインカーを出すのが遅れた。

上記表より、 「メールアプリ使用」や「ゲームアプリ使用」のスマホ操作がともなうものは、「ハンドル操作不安定・対向車線にはみ出す」や「飛び出したボールに衝突」、「信号の見落とし」など運転操作に大きな影響を与え、重大な事故を招く危険性が高くなる。
「ハンズフリー装置で通話」に関しては、「ウインカーの遅れ・出し忘れ」や「停止が遅れる」など運転に必要な情報収集が漫然となり、認知・判断・操作のタイミングが遅れ、危険な状況に陥ることがある。

まとめ

  • 運転中の「ながらスマホ」は、文字や画面を見ることに集中してしまい、急な飛び出しなどに反応できず衝突する危険性が高くなる。
  • 「ハンズフリー装置での通話」も含め、「ながらスマホ」では視線は前方の狭い範囲に集中し、上下左右に配られない。そのため、信号や一時停止を見落とすことが多くなる。
  • ブレーキや発進のタイミング、ウインカーの遅れなど、運転操作に影響を及ぼし、周囲に危険を与える。
  • 周囲の情報(他者(車)や死角など)を認知するために一瞬の目視確認は必要であるが、運転中にスマホ画面を見たりスマホ操作することで正しい運転操作はできなくなる。

「ながらスマホ」は周辺の認識が難しくなり、事故につながる大変危険な行為なのでやめましょう。