バイクの音を楽しむ『名車図鑑』4:YAMAHA YZF-R3
YZF-R3オーナーのバイクストーリー
モータースポーツの盛り上がりが加速していた高度経済成長真っ只中の1950年代、今や伝説にもなった富士登山レースや浅間高原レースで新参ながら見事に優勝を果たしたヤマハ。その後も様々なレースで勝利を重ねるごとに知名度を上げ「レースあるところにヤマハあり」とまで呼ばれるようになった。
そんなレーシングスピリットを持つヤマハが「毎日乗れるスーパーバイク」をコンセプトに2014年に発売したのがYZF-R25。そしてその性能をより活かすため排気量を320ccにアップさせて誕生したのがこのYZF-R3である。高回転域でのパワーを追い求めた結果、低回転域がある程度犠牲になっているYZF-R25に対し、排気量増が余裕をもたらすこのエンジンは低回転域では市街地でも乗りやすく高回転域ではよりスポーツ性が高まるよう仕上げられており、全域で一回りも二回りも力強くなっている印象を持つ。それだけではない。アクセルを開けた時の爽快感や加速感はR3より排気量の大きなスポーツバイクと比べても遜色ないどころか優れているのではないかと思わせる。
その証明は車体構成を見れば明らかだ。
昨今の400ccクラスのスポーツバイクに匹敵するパワーを持つR3の車重は僅か170kgで兄弟車のR25(250cc)と比較しても僅か3kg増に過ぎない。400ccクラスが軒並み200kg近い車重を持つことと比較するとその軽さは一目瞭然。この軽量な車体に42psの心臓を搭載することによって導き出される加速性能評価は、数値の上ならなんと90年代の4気筒250ccレーサーレプリカに匹敵するのである。
しかしこのR3、決して扱いにくいという事はなくライディングに求められる「楽しさ」を存分に味わせてくれる。スポーツ性と扱いやすさの両立という難しい課題を70ccの排気量アップという手法でいともたやすく解決してしまったという事実に驚きを隠せない。
肌がピリピリと痺れるような感覚で駆け抜けたコーナリングや、体が置いてかれるような加速の面白さを思い出しながら「昔のバイクは良かったなあ」と懐かしがるレプリカ世代のライダーをも唸らせる。そんな魅力と性能がこのヤマハブルーのボディには秘められているのではないだろうか。
「毎日乗れるスーパーバイク」の名に恥じず、誰もが気軽にスポーツライディングを味わう事ができるYZF-R3はまさにスポーツバイク界のオールラウンダー。脈々と流れるレーシングスピリッツによって作られたこのモデルの出来栄えは「流石」と言わざるを得ない仕上がりになっている。
アルミ鋳造10本スポークホイール
車体をよりグッと引き締めてくれているのが特徴的なスポーティーデザインのホイール。性能だけでなく視覚でも十分に楽しませてくれる。
誰でも扱いやすい、320ccという排気量
初心者~上級者まで満足をさせてくれるのも320ccという排気量のおかげ。クラスを超えたパワーウェイトレシオにより鋭い走りを約束。
逆スラントノーズデザインのヘッドライト
ここ最近のトレンドでもある逆スラントのフェイスはバイク全体がシャープに見えるよう設計されている。
エンジン音を視聴する
エンジン形式:水冷4ストロークDOHC直列2気筒
総排気量:320㎠
全長×全幅×全高:2090mm×720mm×1135mm
車体重量:170kg
最大出力:42ps
最大トルク:3.0kgf・m