JAF NEWS RELEASE
本部広報2006-16
平成18年7月18日


後席シートベルト着用に関する海外実態調査を実施
〜着用の法制化を巡る諸問題を検討へ〜


 JAF(社団法人日本自動車連盟)は、海外における後席シートベルト着用の実態などを把握するため、「後席シートベルト着用に関する海外実態調査」を行い、それを報告書としてまとめました。
 この調査は、諸外国における後席シートベルト着用率の推移、法制化の効果、その普及策などを調べ、日本における着用推進の方法を検討するための基礎資料を得ることを目的としたものです。

 この調査の結果、諸外国において、後席シートベルト着用が普及している国々は、アメリカ(カリフォルニア州89%)、イギリス(66%)、スウェーデン(75%)などです(調査はいずれも2001〜2004年現在のもの)。
また、わが国と違って、後席の「着用」を法的に義務化している諸外国の多くは、反則金を科しています。例えば、アメリカ、オーストリア、オランダ、スウェーデン、デンマーク、ニュージーランドなどがそれで、その反則金は5,000円前後が多いようです。さらに反則金と違反点数を併用している国々もあります。例えば、イギリス、オーストラリア、カナダ、スペイン、ドイツ、フランスなどです。

 この調査により、(1)諸外国の多くが後席シートベルトについて法的な義務化に基づく違反点数の付加などにより、その着用率を上昇させていること、(2)法制化と併せて、国民全体を巻き込んだ啓発キャンペーンなどを展開し、これが「着用」の習慣化を促していること、などが分かりました。
また、今回調査対象としたほとんどの国において、「車内全席でのシートベルト着用」の考え方が一般的になっています。日本においても「後席」を対象とした義務化などの施策について、前向きに検討する段階にきていると考えられます。


「後席シートベルト着用に関する海外実態調査」報告書の要約
1. 日本のシートベルト着用状況と普及施策の現状
  シートベルト着用率については、前席乗員は約9割(運転席92.4%、助手席80.3%に対し、後席乗員は一般道路が8.1%、高速道路が9.8%と1割に満たない。
  後席シートベルトを着用しない理由について尋ねたところ、「前席と比べ装着しづらいから(42.2%)」、「窮屈だから(37.2%)」、「シートベルトをするのが面倒(34.0%)」、「前席のように点数がつかない(30.3%)」、「後席は危険性が低いから(18.1%)」などが、その理由としてあげられた。
  日本の着用義務化は、まず、1985年(昭和60年)9月から高速道路を対象として施行され、その翌年11月に一般道路に拡大された。その内容は前席乗員に対して科せられているもので、違反した場合には運転者に対し罰金や反則金はないものの、違反点数が1点付加される。後席シートベルトに対しては、あくまで運転者の努力義務としてのみ存在し、「着用するよう努めなければならない」とした表現に留められている。
2. 海外諸国の後席シートベルト着用状況と法制度
  欧米諸国における後席シートベルト着用状況を見ると、意識の高い国として、イギリス(66%)、スウェーデン(75%)、オランダ(32%)、アメリカ(カリフォルニア州89%)などがあげられる(調査はいずれも2001〜2004年現在のもの)。
  諸外国では、違反者に対して反則金を科す国が多く、反則金のみの国の例として、アメリカ、オーストリア、オランダ、スウェーデン、デンマーク、ニュージーランドなどがあげられ、その反則金も5,000円前後が多い。その一方、反則金と違反点数を併用している国の例としては、イギリス、オーストラリア、カナダ、スペイン、ドイツ、フランスなどがあげられる。
各国の法制度
  イギリスの法制度は、1986年に前席シートベルトを導入し、1991年には成人(14歳以上)を対象とした後席も導入された。さらにその適用範囲はミニバスや配送車に拡大され、反則金は、それぞれの乗員に対して適用される。
  アメリカの法制度は、導入されたのは1985年以降であり、その内容は州によりさまざまである。成人(16歳以上)後席の義務化については18州が導入。増加傾向にある。
  カナダの法制度は、州レベルで導入されている。今日では全地域で、全乗員のシートベルト着用義務化が図られ、反則金は、それぞれの乗員に対して適用される。
諸外国における着用啓発キャンペーンの実施状況とその効果
  イギリスでは、後席シートベルト着用法が1991年に導入され、1993年以降からの後席着用キャンペーンでは、おおむね次のポイントに焦点を当てた活動をしている。
  (1) 道路交通安全の認識を高める上で、テレビCMが最も有効な手段であること。
  (2) 同じメッセージに繰り返し接することにより、国民の認識は高まること。
  (3) 広告は、慣れると影響力を失うため、断続的な放送が有効であること。
  (4) ショッキングな場面を示す広告などは、子供の見る時間は避けて放送すること。
  アメリカでは、1997年からクリントン大統領(当時)によって、啓発と取締りとを統合したキャンペーンが開始された。その対象は常に運転者と同乗者である。また強化キャンペーン期間中には、若い運転者や地方からの運転者が特定の対象者となった。これらのキャンペーン活動によってアメリカでは、子供の死亡数が20%以上減少、乳児用シートの使用率が85%から99%に上昇し、幼児用シートの使用率は60%から94%へと上昇。さらに成人のシートベルト着用率は、62%から79%へと上昇したことが報告されている。
  カナダでは、運輸省が行った「もしシートベルトを着用しなかったら、何があなたを守るのですか?」としたキャンペーンが行われ、1984年〜1994年にかけての着用率は55%〜85%まで上昇し、自動車乗車中の死傷者数が減少した。1989年以降、5,500人以上もの人命を救い、100万人の受傷者を回避し、それによって医療費や社会保障費が90億ドル超も削減したと算定されている。
3. まとめ
  「全乗員の保護」。現在、後席シートベルトの着用が義務化されている欧米各国においては、その多くが全席シートベルトおよびチャイルドシートの使用を義務化している。しかし、個々の事例を見ると、必ずしも車内の全ての座席について一斉に義務化されたものではなく、まず前席シートベルトの義務化を先行・定着させてから、一定期間をおいた後、後席義務化を実施した国々が多い。
  わが国では、違反点数の付加という軽微なペナルティーのみであるにもかかわらず、前席シートベルトの着用率は世界トップクラスである。また、前席シートベルトの有効性はおおむね理解されており、後席シートベルトの有効性が認識されるのには、さほど時間はかからないと思われる。従って、後席シートベルトについても、義務違反の点数付加により着用率を上昇させ、適切なキャンペーンの実施により、着用の習慣化は可能と思われる。その導入時期、条件等について、検討しても良い段階であると考えられる。



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