JAFストーリー

Episode 72 孫たちが

中村秀悦隊員。39歳。青森支部。

中村秀悦隊員。39歳。青森支部。「最初、JAF Mateに載ってたひとに似てますねって言われて、いえ違いますって答えたのが印象に残ってます」

青森県/小山敏子さん

小山敏子さんには孫が7人いる。近所の黒石市に住む長女のところに5人、東京に住む次女のところにふたりだ。

東京に住むふたりの孫は、毎年、夏休みに遊びにくる。中学生と小学生。ここ最近はふたりきりで夜行バスに乗ってやってくる。

「前の年に来ればね、つぎの年の約束して帰るんですよ。ずっと練ってね、行ったらすぐなにをするとかってね、ちゃんと決めてるんですよ」

昨年の8月13日の朝に孫たちが東京から到着することになっていた。弘前駅まで敏子さんが迎えに行く。

敏子さんの愛車は、ワンボックスタイプの軽自動車。マニュアル車で走行距離は15万キロを超えた。

孫たちが来る前日の12日の午後。とある踏切先の信号手前――。

「ギアを入れ替えるために、踏んだんですよ、そしたらボキッて音がしたんですよ。そのままペダルが、前さ行っちゃってね」

クラッチペダルが戻らなくなってしまったのだ。左側のクリーニング店の前に車を寄せるのが精一杯、そこでまったく動かなくなった。

「JAFにお願いして、どっか持っていけるところがあればと思ってね。いつも行ってるところは黒石の自動車屋さんだったけども……」

中村秀悦隊員がやってきた。現場での修理は無理、とにかく部品交換の必要があると判断した。あちこちに電話してみたが、お盆休みでディーラーも修理工場も休み。自宅まで運ぶしかなかった。

「とりあえず運ぶだけになっちゃいますねって言ったら、ああそうなんだって、なんとなく、すごい残念そうだったんですよ。ああって……」

孫たちとの約束が果たせない。そのことで敏子さんの頭はいっぱいになった。

中村隊員はレッカー車のなかで、様子が気になって敏子さんにあれこれ話しかけた。すると――

「実はって、東京だったかな、孫が帰ってくるんですよって、どっかに遊びに連れていきたかったんだけどねぇって……。そしたら、自宅の前というか、見える範囲のところに車屋さんがあったんですよ」

中村隊員は、あそこに行ってみたらどうだと勧めた。

「そこには行ったことないし、いつものとこばっかり利用してたので、ちょっと都合悪いなと思ってね。でも、都合が悪いって言ってられねぇんでねぇの? ってことになって」

中村隊員に勇気づけられて、敏子さんははじめてその修理工場に行ってみた。営業中だった。部品の取り寄せはお盆明けになるけれど、代車が用意できると言われた。

そして無事、孫たちを迎えに行けた。海にも梵珠山のハイキングにも映画も行くことができた。プールも、焼肉も……。夏休みのあと、楽しかったと孫たちからメールがきた。

中村隊員の強いアドバイスがなければ、その夏休みはなかったと、敏子さんは何度も言った。

(文=松尾伸弥  写真=両角栄介)

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