JAFストーリー

Episode 73 母、ナンパ

上林賢人隊員。35歳。兵庫支部西神基地。

上林賢人隊員。35歳。兵庫支部西神基地。「そう。JAF Mateに手紙を出しますよって言うてはりました。やっぱり、めっちゃ恥ずかしいですよ」

高知県/吉村知加さん

知加さんは、昨年の9月、お母さんの誕生日のお祝いにふたりで大阪までドライブをした。

「大阪の1000円ショップに行きたくて。そのお店にはカバンなんかもいっぱいあって、全部1000円で売ってるんです。そこに行きたいって言ってたんで……」

朝8時ごろ高知を出発して、神戸淡路鳴門自動車道を経て神戸を抜け、梅田に着いた。買い物と昼食もすませて、大阪を出たのが2時ごろ。

帰り道。明石海峡大橋までおよそ10キロ。布施畑ジャンクションの手前で、ふいにクルマ全体が振動しはじめた。

「ガタガタって、なんかタイヤにからんじゅう、なにかが噛んだんやろかって話してて……その1分後くらいにバフンって音がして」

どこからかわからないが、とにかく、爆発音がした。ミラーを見ると、うしろから派手に煙が出ている。

知加さんはパニックになりながらもトンネルの手前で減速して、なんとか路肩に止めて、すぐにエンジンを切った。

JAFに電話した。場所説明などのやりとりのあと、オペレータから、車外に出てガードレールの外で待つように言われた。

「荷物だけ持って、ガードレールの向こう側に空き地みたいなところがあったので、そこに……。ちょうど毛布を積んでたので、それを持って座って待ってました」

40分ほどして後方警戒車と同時に上林賢人隊員がやってきた。彼は指令からの連絡で状況は把握していたので、まず車両を牽引して高速から降りることを優先した。

「高速道路上には、おればおるほど危険度があがりますので……」

布施畑インターで降りて、広い場所に車を止め入念に点検。エンジンが焼けてしまっていた。すぐには修理がむずかしいと判断した。

知加さんは、翌日が仕事なので帰りたかった。それで、車積載車を手配して高知まで運ぶことにした。

「時間的にも暗くなってました」

上林隊員は、そのときのことをよく覚えていた。

「車の通りも少ないゆうことで、女性ふたりで、しかも県外のかたやし、ちょっと不安かなと思いまして。指令と相談しまして、おらしてもらっていいですかと」

上林隊員は吉村さん親子といっしょにいることにしたのである。

「お母さんがすごい気に入って、お兄さんは結婚してますかとか、なんかナンパみたいなことしてるんですよ。いくつ? とか。惜しいねぇ結婚してなかったらねぇとか」

結局、高知に戻ったのは深夜になった。大変だったけど、上林隊員のおかげで温かい思い出になった。

「ここに載ったら隊員さんの株も上がるよねって、お母さんが……」

JAFストーリーへの投稿を勧めてくれたそうだ。上林隊員が独身だったら、お母さん、どうするつもりだったのだろう。

(文=松尾伸弥  写真=両角栄介)

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