
愛知県/仁平勝利さん 31歳
仁平勝利さんはトラックドライバーだ。お父さんもトラックの運転手で、その仕事を幼いころから見て憧れていたのだという。
有理さんと結婚したのが3年前。ふたりはバイクツーリングの仲間として知り合った。
「集まりがあって、そこで知り合って……このひとは一生バイクに乗りたいから、それを許してくれるのはバイクに乗ってる女のひとだろうって言って。私の年代でバイクに乗ってる女のひとって少ないので消去法みたいなね。きっかけはまぁ、そういうことですけどね」
なんて、有理さんは笑う。でも、それだけでは、もちろんない。
「仕事の話を一生懸命できるひとっていうんですかね。愚痴とかじゃなくて、こうしていきたいっていう話を言えるひとだったので。このひとなら大丈夫かなって」
なんでも言い合い笑っていられる、すてきな夫婦だ。
さて、昨年の4月19日。
勝利さんは仕事が休みだった。朝8時前、出勤する有理さんを送っていった。その日は、あとで車のバッテリーを買いにいくつもりだった。ディーラーの定期点検に出したときにバッテリーが寿命だと指摘されていたのだ。
「ショップにいく前にバッテリーがだめになったりして、なんて笑ってたんです。その前に私は送ってもらえてよかった、なんて」
そのあと、今度はお母さんを病院まで乗せていった。勝利さんはいつも、診察が終わるのを駐車場に止めた車のなかで待つ。病室にいて風邪でもうつされては困る、と、プロドライバーは健康に配慮するのだ。
「エンジンを切って車のテレビを見てました。1時間くらいして母が戻ってきて、エンジンかけたら、うんともすんとも言わない。最初はなにが起こったのかわからなくて、何回もやってるうちに、これはもしかして、あがったな、みたいな」
1時間もテレビを見ていたら健全なバッテリーだって消耗すると思うが、とにかく、JAFを呼ぶしかなかった。15分ほどで池戸翔隊員がやってきた。ずいぶん若く、頼りなく見えた。
「ちょっとね、疑いました。大丈夫かなと。だけど対応もよく、テキパキやってくれたので、不安っていうか、そういうのも吹っ飛んで、もうすっかりまかせてました」
勝利さんはその場で池戸隊員からバッテリーを購入した。作業を見ていて、この隊員から買いたいと思ったのだ。
「作業をやりながらも、ときどき中断して、親のほうにいって、体調大丈夫ですかって声もかけてくれて、最後まで親の心配をしてくれて……それには感動しましたね」
話を聞いていた有理さんが、おかしそうに笑う。
「このひとの父親も運転手なので、その日の夕食は、コテンパンに言われてました。お前、それでもプロかって」
勝利さんは、頭をかく。
「その日にバッテリーを買いにいくからって安心感があって、まさか、すぐにとは……」
後悔先に立たず。
(写真・文=松尾伸弥)