JAFストーリー

Episode 82 心臓ドコドコ

大矢直樹隊員。26歳。多治見基地。

大矢直樹隊員。26歳。多治見基地。入社3年目。「勉強することはいっぱいありますが、喜んでもらえると、やりがいを感じます。JAFに入ってよかったと思ってます」

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岐阜県/多々羅君子さん 61歳

ムサシは柴犬だ。君子さんは、昨年の6月25日、ムサシを動物病院に連れていこうと思い車のエンジンをかけた。エアコンをかけ、バッグも車のなかに置き、あとはムサシを車に乗せるだけ。いったんドアを閉めた。

「パッと閉めちゃったんです。鞄もなんも入れて……ポンと閉めたら、パタンと鍵がかかっちゃったんです。あとでみていただいたら、鍵自体がちょっとこれ、なんていうんですか、リモコン?あれがどこか調子が悪かったんでしょうね。バタンってやったときに閉まっちゃったんですよ。家にも鍵をかけて、外に出て、エンジンかけたらパタンですもんね。もうどうしようって思って……」

大事件、勃発である。

家にも入れない。エンジンはかかりっぱなし。しかも、その日は朝からとても暑かった。JAFに電話しようにも携帯電話も車のなかだ。

「おとなりに携帯電話を借りて、恥ずかしくて……ごめんなさいって、快く貸していただいて、JAFに電話かけたんです」

オペレータに少し時間がかかると言われた。

「わぁもう、そんなの聞いただけで、わぁって。ちょっと昔、更年期がひどかって、ドキドキってなったりするので……パニックっていうんですか?心臓がドコドコドコドコ、飛び出るくらい。どうしようどうしよう、どうしましょうって感じで」

ムサシを車に乗せる前でよかったと、君子さんは何度も言った。

「あれで犬を入れてたら……もうびっくりしちゃって、そこらじゅうを触って……」

と、想像しただけで苦しそうなのである。

君子さんは車のまわりで待ち続けた。

「うろうろ、してました。おとなりには迷惑はかけられないですので、その場に座ったりとか、ムサシにこう話しかけても……知らん顔で……」

もちろん、ムサシは車のドアロックには関心がない。

30分ほどで大矢直樹隊員がやってきたが、君子さんには1時間より長く感じた。

「ほっとしました。ほんとに。さっきまでのドキドキが、すっとなくなっちゃって……ああ来てくださったと思って。どうされましたかって落ち着いた感じで、こうこうこうだったんですよって」

大矢隊員は、そんな君子さんの様子を見て、急いでいると思った。

「お客さまが、病院に行く前でって話をされたんで……確か、急いでいるっていうことなんで……できるだけ早くって思って、開けました……はい、もう、作業的には1分もかかってないと思います。朝方だったんで、気温もそんなに高くなくて、快適で作業もしやすくて、ほんとにすぐに開けて、終わりましたね」

大矢隊員にとっては、淡々とした日常業務なのだ。

3年前、息子さんが君子さんの運動不足解消のためにプレゼントしてくれたのが、ムサシだ。番犬でもある。

その日も、ムサシは、大矢隊員に向かって律儀に吠え続けた。

(写真・文=松尾伸弥)

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