JAFストーリー

Episode 85 車上荒らし

横山慎隊員。31歳。鈴鹿基地。

横山慎隊員。31歳。鈴鹿基地。「盗難を想像することが予防につながると思います。ひと目につく明るい場所に止めるとか」開園50周年の鈴鹿サーキットにて。

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三重県/春園京子さん 50歳

春園京子さんと長男の功太さんは広い家にふたりで暮らしている。長女は大阪で働いていて、旦那さんは九州に単身赴任中だ。

功太さんは名古屋にある鍼灸(しんきゅう)専門学校に通っている。

「スポーツトレーナーをやっていこうと思って……。トレーナーにもいろいろ種類があるんですけど、メディカル面の、針だったりテーピングだったり、そういう治療方面のトレーナーになりたくて」

陸上長距離の選手だった功太さんは、高校時代、けがや故障に悩まされた。

「そのたびに鍼灸師のトレーナーさんに治療してもらってて……その影響がありますね」

鍼灸師は高校の先輩だった。そのひとに憧れて名古屋の専門学校に行くことにした。学校が終わると鍼灸治療院でバイト、終電で帰ってくる。

最寄り駅のそばに駐車場を借りている。家まで車で10分くらいの距離だ。

夜中の1時過ぎ。車に乗りこむと……。

「ぜんぜん気づかなくて……乗ってエンジンかけたら、なんかこう、ワイパーが勝手に動いてて、パッと見たらカーナビがなくて……まわりを見たら窓ガラスが割れてたんで……ああ盗まれたんだなぁって思って」

車上荒らしだ。左側後部座席の窓ガラスが割られていて、乱暴にカーナビが取りはずされ、CDも盗まれていた。

功太さんはすぐに京子さんに連絡した。

「電話かかってきました、こわされたって。じゃあ警察に先に電話してって言って。それから私が行ったんですけど、車で……」

京子さんは、そのときはじめて、駐車場には外灯がないことを知った。

「ああ真っ暗なんやと思って。左側のうしろのタイヤもパンクさせられてて……車内は、かなりぐちゃぐちゃでしたね」

京子さんからの連絡で、横山慎隊員が呼ばれた。到着したときには、すでに警察の現場検証は終わっていた。

横山隊員は素早く作業を開始。割れたガラスを除去して、窓にはビニールを貼った。

「小雨が、その日は降ってましたんで。なかも濡れてたんですけども、それ以上濡れないようにということで、ビニールを貼らしていただいて……」

スペアタイヤを装着し、レッカー車で牽引した。

車上荒らしの被害現場に行くのは、つらいものだと横山隊員は言う。被害に遭った気持ちを想像してしまうのだ。

「タイヤも横から刺されて、修理がきかない状態でしたんで。なんでそこまでしたのか、わからないと思いました。お客さまのことを考えると心が痛いです……」

京子さんも、思い出しながら肩をすくめた。

「悲惨やったね。びっくりした。はじめてだったし、夜中やったから……いつもふたり暮らしなんで、なんかあったときに不安なんですね」

ところが、被害にあった功太さん本人は首を振る。

「うーん、面倒くさいなって思っただけですね」

息子というものは、ときどき、のんきに見える。

(写真・文=松尾伸弥)

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