JAFストーリー

Episode 88 落下物

北本信夫 隊員48歳。福崎基地。
「道路上には、タイヤの破片とか金属片とか、いろんなものが落ちてます。十分に車間距離をあけて、注意して走ってください」

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北本裕一さんは、現役時代、トラック販売会社で働いていた。若いころから車も好き、バイクも大好き、オーディオもカメラも日曜大工も好きという多趣味な人生を送っている。

「娘たちも嫁いで、奥さんとぼくだけ。それで買ったのがそのツーシーターのオープンカー。新車ちゃうからね、中古で買ったから」

けれど、オープンカーは奥さんには評判が悪く、乗ったのは数度だけ。

「そやから、ひとりで、カメラを積んで、あちこち行きましたよ……」

そして、昨年の1月22日。

「正月明けに、伊勢神宮とか鳥羽のほうへ遊びにいこう思てね、ひとりで。朝8時ごろここを出て……」

家の近くの藍那(あいな)インターから阪神高速北神戸線に乗った。十分ほど走ると、前方を行く道路維持作業車が見えた。

「その作業車がドンと揺れたんや。ドンと揺れて、融雪剤の粉みたいなのがバンと煙のようにあがったわけ。真っ白に煙があがって、その直後にドカンときたわけや」

ものすごい衝撃だった。左側の前輪がなにかに乗りあげ、つぎに右側後部が浮いた。

どうやら、道路上に落ちていた異物を道路維持作業車が踏み、踏んだ拍子に跳ねて北本さんの車の左前方に当たり、ボンネット下を通り抜けていったようだ。ルームミラーを見ると、黒い物体が転がっていく。北本さんには、大きな角材のように見えた。

一歩間違えば大事故だった。幸いハンドルに違和感はなく、水温計をにらみながら待避場所を探した。中国道に入る料金所を出たところで右側に空きスペースがあった。そこに車を入れた。

「まず最初JAFに電話して、そのあとディーラーに電話を入れてね、故障したから今日持ちこむよって。あとはJAFの到着を待ってたんや」

北本信夫隊員は、指令からの報告で状況は把握していたので、途中、道路上の落下物を確認しながら走った。

「お客さまはエンジンかける状態じゃない、暖房もきかない、待つのも寒いし、早く行かないとだめだ、でも道路の危険もある、気分的にちょっと焦る、そんな感じでした」

待避スペースはとてもせまかったが、まずは素早く車積載車に積みこんだ。

「慣れた感じでしたね。名塩のサービスエリアでもういっぺん確認してね、固縛(こばく)状態を」

トラック関係の仕事をしていた北本さんは「固縛」というような用語もふつうに使う。ある意味、専門家の目で、隊員の作業を見ていた。

「ディーラーまで運んでもらうのにね、ぼくが提案したルートを彼はナビで見てね、これは距離が遠いと。高速代もかかると。時間がおありやったら、このコースのほうがいいですよゆうて、彼のほうから提案してくれたね」

「ぼくは、お客さんの負担が少ないのがいちばんうれしいんで……そういう会話は心がけております」

そしてなにより、苗字が同じというのがなにか縁だと、ふたりは車内で語り合い、忘れられない思い出になった。

(写真・文=松尾伸弥)

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