JAFストーリー

Episode 90 娘とふたりで

西葡シ哉隊員 36歳。松山基地。

西葡シ哉隊員 36歳。松山基地。
旧車(古い車)が大好き。「いろんな車に触れるのも楽しいし、車好きのお客さんとの出会いもありますし。仕事はおもしろいです」

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愛媛県/渡部知彦さん 67歳

渡部知彦さんは、元警察官である。以前はさぞ強面だったろうが、いまは柔和で快活な話しぶりだ。

「2006年やったかな、娘がホノルルマラソンに行って、その翌年に、お父さんいっしょに行こうって……」

生まれてはじめてフルマラソンに出場。そうやって62歳からはじめたマラソンに完全に魅了されてしまったのである。6年の間に出場したフルマラソンは、なんと14回。

「みんなに言うんやけど、自分自身の感動と栄光のために走るんだと。すばらしいスポーツやと思うんです」

昨年の10月21日。娘さんが四万十川ウルトラマラソンに参加したので、知彦さんは応援に行った。

娘さんが参加したのは60キロレース。四万十川沿いのコースの途中に2か所ほど休憩スペースがある。

「休憩所を1キロくらい通りこして、ちょっと左側にふくらんだところに止めて、応援しよったんですよ」

娘さんに声援を送ったあと、車に乗りこんだ。

「つぎのゴールに先まわりするけんゆうて行こう思たら、空まわりですよ、キュルキュルキュル……エンジンがかからん。弱ったなぁと。先に行って待ちよるぞゆうたものの、なんぼやってもかからん」

周囲にランナー以外の人影はない。あせりながら上流のほうに歩いてみるとバスが停まっていた。運転手に相談したところJAFに電話するしかないと言われた。

JAFに連絡した。目標物のないなかを、なんとか探しだして来てくれた。渡部さんは急いでいた。

「ブースターでちょいとやってかかった。そのときに、このバッテリーはだいぶ傷んでるけん、目的地に行くまではエンジン切ったらいかんですよゆうて言われたんです」

ゴール地点には、娘さんよりも早くたどりつくことができた。駐車場でうっかりエンジンを切った。娘さんを乗せて、松山まで帰らなければならない。少し心配したが、エンジンは問題なくかかった。

「ほっとした、ほんと。そこから2時間、高速走りました」

家まであと1キロのところでコンビニに寄った。すでに夜の10時ごろだ。

「エンジンをパッと切って……完全に忘れとるわけですよ。買い物して、さぁ帰るぞと。ほいたら、キュルルルル……また同じことや。ほんでまぁ改めてJAFに電話かけて……ほたら、20分くらいで来てくれた、若いひとが」

やってきたのは松山基地の西葡シ哉隊員。すぐにエンジンをかけてくれた。

「かかった。うれしかったですね。それでまた最後に、ええこと言うてくれた」

渡部さんは、西舞煦の別れぎわの言葉がいまでも忘れられないと言う。

「あのね、翌日、たぶん自動車屋さんへ行かれるじゃろと思うけども、たぶんかかりませんから、そのときはまた呼んでくださいって。やさしいこと言いますよ、ほんと。あんな言葉かけられると、JAFに入っとってよかったって、娘とふたりでよかったのぉゆうて……」

(写真・文=松尾伸弥)

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