お客様の声
〜JAF ストーリー〜

91

2013年4月号

エンジン

ウエイトリフティング

お客様
吉田三郎さん(61) - 大分県

吉田三郎さんはウエイトリフティング歴43年。リビングにあるガラス扉のキャビネットにはたくさんのトロフィーが飾られている。世界大会にも4度出場して、銀賞を2回受賞したそうだ。

いまは、24時間制シフト勤務の警備会社に勤めながら、トレーニングを積み、若手の指導にも取り組んでいる。

昨年の11月3日。福岡県北九州市で九州大会があった。

仕事の都合で、家を出発したのが夜中の3時。高速道路は夜間工事のため、速見から宇佐までが通行止めだった。国道10号を走った。

別府に入ったあたりでエンジンが軽く震えはじめた。その震えはやがて大きなものになり、ついにはエンジンから煙があがったのである。

日出(ひじ)にある深夜営業のセルフガソリンスタンドに、なんとか車を入れることができた。スタンドのスタッフに事情を話すと、すぐにJAFに電話をしてくれた。

北野聡隊員がやってきた。

「オーバーヒートでエンジンが完全に動かない状態だったんです。現地で応急処置ができる状態ではなかったので、もう……残念ながら牽引になるという話をしました」

北野隊員はそのときのことをよく覚えている。もちろん吉田さんのことも。

「いまから重量挙げの大会がってお話は聞いたんですが、コーチの先生か、監督さんかなと思ったんです」

吉田さんはどこかにけん引するしかないと聞いて、絶望的な気持ちになっていた。

「9時から検量がはじまるので……最低でも1時間前に着くっていうのがわれわれリフターの常識なんですよね」

検量を受けなければ、記録は正式なものとは認められない。 ここで車が故障しては、とても検量には間に合わない。

「もう、もう、だめだろうなと思ってました」

「お客さんが、ウエイトリフティング人生もこれで終わりかなと、ちらっと言われたんですね。そのときに、もしかして、このひと選手かなと。それで言ったんです。あきらめないで、いっしょにがんばりましょうって」

吉田さんには、北野隊員の言葉が信じられなかった。

「北野さんが、会場に行けるように、お手伝いさせてくださいと。え?そんなことできるんかなと」

北野隊員は、すぐに指令に電話を入れた。

「幸いスタンドの中なので、安全じゃないですか。事情を説明して車を置いてもらうように話をしましょうという感じで……会場の地理を福岡の指令で調べてもらい……それで、ピンポイントで時間が計算できて……」

詳細に乗換駅や乗るべき列車を調べあげ、北野隊員は吉田さんの背中を押した。

「それまでの練習時間ってすごい長いと思うんですよね」

と、北野隊員は吉田さんの努力を想像していた。

そして---- 。吉田さんは検量に間に合い、しかも、優勝したのである。

「北野隊員の顔が、いちばん先に頭に浮かびました」

吉田さんは、思い出して、泣きそうな顔をした。
(写真・文=松尾伸弥)

駆けつけた隊員

北野聡 隊員 41歳

大分基地。
「JAFに入社した理由は、困ったひとを助けたい、です。その心は忘れたくないと思っているので、つねにそこは全力で……」。趣味は献血。

このページのトップへ