JAFストーリー

Episode 96 悠々自適

辻田剛 隊員 40歳。 浜松基地。

辻田剛 隊員 40歳。
浜松基地。
野上さん救援時は伊豆基地。「車のトラブルも、あとで振り返ればよい思い出になるよう、お役に立ちたいと思っています」

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三重県/野上正樹さん 65歳

野上正樹さんは、大手メーカーに勤務後、リタイアしておよそ2年。長男は松阪市、次男は千葉県船橋市、長女は近所に住んでいて、孫たちもよく遊びにくる。

今年の3月なかごろ、野上さん夫婦は東京へ行った。

「次男は独身なんです。その次男が、春に1週間休みがあったんですよ。家内が東京のほうとか日光に行きたいって言ったんで……東京見物して、次男のところに泊まって、それから3人で日光に行って、日光から伊豆のほうに行く予定を立てたんです」

釣りが趣味の次男は、外国製の少し大きめの四輪駆動車を所有している。それに乗って家族でドライブをした。

日光から伊豆へと順調に走っていたが、下田街道から伊豆中央道に向かう交差点で、右折しようとしたき、ふいにエンジンが止まった。

「いまから思えばガス欠みたいな感じですよね。すーっと止まって……ぜんぜんわかんなかったです、止まったのも。で、行こうとしたら、あれ?  エンジンまわってないって」

あせりつつ正樹さんは車を降りて、次男とふたりで、交差点の外まで車を押した。

正樹さんは自分でJAFを呼んだことはない。次男は何度も救援依頼をしたことがあるので、すぐにJAFに電話。15分ほどで辻田剛隊員がやってきた。

辻田隊員は、問診のあと、すぐに点検をはじめた。

「基本点検に準じたかたちで作業をしまして、現場では復旧できないと判断しました」

隊員の作業の様子を、正樹さんはよく覚えている。

「ポンプのところに耳を当てて、エンジンをかけてくださいって言って……どうもポンプみたいですねって」

燃料ポンプが破損していて、エンジンにガソリンが供給されていないようだった。

近くのディーラーまでけん引することになった。

下田のホテルを予約したときに、7時までにチェックインしないと夕食に間に合わないと言われていた。

「まだそのときは4時くらいだったんで、じゅうぶん間に合うはずだったんです……」

ディーラーでは、辻田隊員が症状を説明。部品を取り寄せて修理するには2週間ほどかかりそうだった。

「下田は、どこに移動するにも、車がないとむずかしいです。せっかく静岡県に来てもらってますので、楽しんで帰っていただきたいという思いがありますので、はい……」

辻田隊員は、レンタカーを借りることを勧めた。そうしないと、7時までにホテルにたどりつけそうになかった。

「楽しい旅を、続けてほしいですから……」

結局、野上さんたちは隊員の勧めにしたがって、レンタカーを借りて、なんとか夕食の時間にも間に合った。

「隊員さんは、すごいやさしかったですよ。親切でした。旅のあと、さすがに次男は、車を替えようと言ってました。親としては、そろそろ結婚して欲しいなって……」

子どもたちはりっぱに成長し、孫たちにも慕われて、正樹さんのつぎの思いは、次男の結婚だ。それもまた、幸福。

(写真・文=松尾伸弥)

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