お客様の声
〜JAF ストーリー〜

103

2014年6月号

雪道

特別支援隊

お客様
鈴木松夫さん(75)、康子さん(72) - 宮城県

今年の2月、中部地方から東北にかけて大雪に見舞われた。2月14日からは、8日に続く2度めの大雪になった。

「仙台でもかなり降りました。ほんと、珍しいくらい」

と、康子さんがおっしゃるとなりで、スマートフォンを操作していた松夫さんが、撮った写真を見せてくれた。

「これ、恥ずかしい話ですが」

細い雪道の左側に、車がななめに落ちてしまっている。

2月16日。雪はやんでいた。ふたりは買い物に行こうと車で出かけた。買い物を終え、大通りに面したガソリンスタンドで灯油を購入したあと、いつも通る農道に入った。

「いつもの裏道です」

「ほぼまっすぐ……ずっと見通しはいいんです」

と、ふたりは、声をそろえておっしゃる。

なぜ、左側に落ちてしまったのか、運転していた松夫さんはよく覚えていない。その直前、会話をしていた。新車に買い換えようかどうしようか、私は反対ですよ、なんて、そんなやりとり。

「静かにしゃべってる間に、すっと吸いこまれたんだね」

松夫さんには、そんな感覚しかない。

「なんか、ふわっとね」

と、康子さん。雪のおかげで大きな衝撃がないまま、車の左半分が田んぼに落ちた。45度近く傾いた車から、まず松夫さんが脱出し、助手席の康子さんを引っぱり出した。JAFに電話したが、大雪のために救援依頼が重なっていて、自宅で待機してもらうほうがいいと言われた。

通りかかった親切な男性の車で自宅まで運んでもらい、鈴木さん夫婦は救援を待った。1時間半くらいすると、隊員から「いまから向かえそうだ」という連絡が入った。

鈴木さん夫婦は、自宅から現場まで、雪道を走った。

松本暁典隊員は、今年の1月から、特別支援隊に任命され、東京の小平基地から仙台に応援に来ていた。特別支援隊とは、災害時や冬期に救援依頼が増える北海道や東北に、他地域から隊員を派遣する仕組みだ。

「雪が降った直後だったので、依頼が集中していて忙しかったですね」

晴れていたが、風が冷たかった。松本隊員は、そのときのことをよく覚えている。

「地元の隊員とふたりで出動していました。ひとりがお客さまの車のハンドルを操作して、私がウインチを巻きながら下を確認しながら、っていうかたちで、作業分担しながらやりましたので……」

わずか5分で作業を終了できた理由を、松本隊員はそう説明した。支援隊として応援に行くのは、やはり緊張する。

「自分が一人前で、ちゃんとできる人間として送り出してもらっているわけですから。そのことを、毎日、思いながら作業をしてました」

来年は金婚式を迎える鈴木さんご夫婦。

「長いですね、忘れるくらい」

と、康子さんは、笑う。

「雪道をあなどってはいけない。夫婦も同じですよ。反省と感謝。ねぇ、母ちゃん、ね」

少し照れ気味の松夫さんに、康子さんは、さらりと言った。

「ということにしておきます」
(写真・文=松尾伸弥)

駆けつけた隊員

松本暁典 隊員 33歳

東京・小平基地。
「たぶん雪が硬かったんですね。それでハンドルをとられたんじゃないかと……怖い体験をされたと思います」

このページのトップへ