お客様の声
〜JAF ストーリー〜

107

2014年11月号

タイヤ

キャンピングカー

お客様
大本良行さん(64)、律子さん(50)

 結婚して、17年。出会いはゴルフ練習場だったそうだが、結婚してからゴルフはやらない。行ったのは、キャンプだった。

「軽自動車に荷物をぱんぱんに積んでね」

 と、律子さん。

「日ごろの生活と違うじゃないですか。電気もないし」

「そうそう。不自由さを楽しむというか」

 良行さんと律子さんの会話は、まるでふたりでひとりのように、おぎないあう。

 そうやってキャンプにはまってしまったふたりは、ミニバンを購入した。

「北海道にキャンビングカーで行きたいねって言って、急に思い立って、つっかけ履きでディーラーに行ったんだ」

 それまで一度もやったことがないが、良行さんは2週間かけてミニバンの車内を改装。14年前につくったキャンピングカーは、いまでも大切な愛車である。

 キャンピングカーをつくったのには、もうひとつ理由がある。結婚して2年目に、律子さんがベーチェット病を発症したのだ。キャンピングカーなら、体調が悪くてもベッドで横になることができる。

「私のは、腸管ベーチェットっていって、ある日突然、腸に炎症がバッと起こって、やぶれちゃうんです」

「出血やね」

「入院して、最低1か月は絶食して、腸を休めて……」

 現在、ベーチェット病の患者数は国内に1万8千人ほど。原因不明の難病である。

「いろんなお薬が出てきたんで、だいぶ症状を抑えられるようにはなったんですけど」

 薬を使い続ける必要がある。だからといって、ふたりは、キャンピングカーで旅行することをやめようとは思わない。

「人生の区切りとして、とにかく、仕事よりも遊びを優先しようと思って」

 良行さんは、冗談を口にするみたいに言うのだ。良行さんは美容師なので、時間は比較的、自由になる。

 さすがに北海道にはもう行けないが、九州には、キャンピングカーで旅行するにはいいところがたくさんある。

 昨年の4月にも、鹿児島に行った。高速道路を1時間ほど走ったトンネルのなかで、いきなり左後輪がバーストした。どうにか非常駐車帯に車を止めて、非常電話ボックスに入った。JAF会員だと言うと、すぐにJAFのオペレータが出た。電話ボックスからぜったい出ないように言われ、隊員が来るのを待った。

 長くカーブするトンネルの壁面が、やってくるレッカー車の回転灯の色で染まり、ようやくふたりの緊張がほぐれた。泣きそうになった。

 城戸哲郎隊員が現れた。

 スペアタイヤに交換して、作業はすぐに完了。ほかのタイヤも少し心配だという城戸隊員のアドバイスを受けて、良行さんは鹿児島に到着後、すべてのタイヤを交換した。

 それからも、キャンピングカーで、あちこち旅する。

「いまが大事。彼女には、生きておけばいいと。生きとることが、最大の、私に対する愛情って……」

 かたわらで、律子さんが、こくりとうなずいた。

「はい」
(写真・文=松尾伸弥)

駆けつけた隊員

城戸哲郎 隊員 50歳

福岡東基地。
「高速道路上では、路肩や非常駐車帯に止めたとしても、車内にいるのは危険です。ガードレールの外など、離れた場所での待機が大切です」

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