お客様の声
〜JAF ストーリー〜

120

2016年3月号

エンジンルーム

そこに猫が

お客様
中村晴美さん(59) - 大阪府

近所に野良猫が多いのだそうだ。
「野良猫じゃなくて、最近は地域猫っていうんですよ」
 中村晴美さんは、少しばかり困惑ぎみだ。
「どんどん増えたんですよね。10年くらい前から、野良猫に名前までつけてエサをあげるひとがいて、きらいなひとはそれで喧嘩しはったり」
 そのうち、地域猫と呼ばれ、不妊手術がおこなわれ、施術済みの猫は耳にマーキングされるようになった。
 晴美さんは自宅に犬を4匹飼っている。
「犬を連れてたら、ネコがふっと背中を逆立てたりしてるでしょ、だからできるだけ近づかないようにしてるんです」
 晴美さんは、つまり、猫が苦手なのである。

昨年の5月18日の朝、犬の散歩を終えて自宅に帰ってくると、家の前に止めていた車から猫の鳴き声がした。
「ここらへんまで来てんねんなぁって。そのあと、用事があって、さぁ出かけましょう思って車のとこに行ったら、また聞こえるんですよ」
 そこに、近所の猫好きのひとが通りかかった。それで、いっしょにボンネットを開けてもらった。
「子猫やったんです。見えたんです。で、そのひと猫好きやから、取って連れてってくれゆうたんですね」
 ところが子猫はすばしこく、エンジンルームの奥に姿を隠す。そのうち、猫好きのご近所さんも行ってしまう。仕方ないので、晴美さんは、猫を驚かせてみようと、車の下にホースで水を撒いてみた。
「それがあかんかったみたいで。よけいに怖がったみたい」
 仕方ないので、晴美さんはJAFを呼ぶことにした。
「こういうことで来てもらうのは申しわけないんですけど、猫好きのひとでも無理やし」
 
やってきたのは、小仲晃一隊員。
「かすかに鳴き声が聞こえるんで、とりあえず下に潜って見てみようと……すると、下から手足が見えたんです。エンジンマウントのせまいところですね。そこに入りこんでるというのは確認できたんですけど……」
 晴美さんの記憶では、隊員はそれから1時間ほど悪戦苦闘したらしい。
「もう、汗だくになりはって、服もドロドロやしね」
「地面には降りてこないんですね。マフラーとか補強材のあたりを、前からうしろ、うしろから前を行ったり来たり、逃げまわってました」
 最終的にスペアタイヤを降ろして、なんとか確保。手のひらに乗るほどの子猫だった。
 
大変な作業だったが、生きていてよかったと小仲隊員。エンジンルームのベルト周辺にいるときにエンジンをかけてしまい、巻きこむということも多いのだそうだ。
「鳴き声が聞こえないか確認してからエンジンをかければ、そういうことは防げます」
 車に乗る前にボンネットを叩くといいそうだ。猫が鳴き声をあげたり、驚いて出てくることもある。
 まずは「そこに猫がいるかもしれない」と思うことが大切。車のためにも猫のためにも、まずはボンネットパンパン、である。
(写真・文=松尾伸弥)

駆けつけた隊員

小仲晃一 隊員 42歳

高槻基地。
「こういう事例は、ここ最近は、冬に限らず、年中多いように感じます。現場で分解できないところに入りこんでしまうと、お手上げですよね」

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