お客様の声
〜JAF ストーリー〜

124

2016年7月号

落輪

たまたま、なぜか。

お客様
室井智さん(55) - 山梨県

室井さんは、高校を卒業したあと自動車整備の専門学校に行き、整備士の資格を取ってディーラーに勤めた。その後、友人と中古車販売の会社をやり、自動車検査員の資格も取り、いまはトラックの運転と整備の仕事をしている。

 一昨年の秋。室井さんは、娘さんから、乗っている軽自動車の調子が悪いので見てくれないかと頼まれた。
「ちょっと修理をするということで、娘から預かってたときに……慌ててたんですね」
 夕方6時ごろ。ほぼ日も暮れて、小雨が降りはじめていた。家に着く手前で携帯が鳴ったので、近所の公共施設の駐車場に車を入れた。このあたりの記憶は曖昧で、車のエンジンまわりをチェックするつもりで広い駐車場に入り、停車した直後に電話が鳴ったのかもしれない。着信表示を見て、話が長くなりそうな気もした、と、室井さんは話す。
  
暗くなってきた。雨も降りだした。娘の車の不具合も調べたい。そんな思いがからみ合った。

「電話がかかってきたんで、耳に当てて、車の外へ出て……そしたら、なぜか、ギアがドライブに入ってたんです」
 パーキングブレーキもかけず、ギアはドライブのまま。車はとろとろと進み、そのまま目の前のブドウ畑のネットを押した。前輪が、段差からはみ出して、ドスンと落ちた。室井さんは、すぐに運転席に戻りバックを試みたが、前輪は空転するばかり。

 救援にやってきたのは、秋山謙太隊員。
「トラックの運転手さんは基本的にマニュアル車に乗っているので、シフトレバーが真ん中にあるとニュートラルの位置と思ってしまうことがあるかもしれないです」

 秋山隊員は、こうも言った。
「家の近くの事故って、多いんです。安心しちゃうんで」
 きっと、そういうことなのだろう。そういう夜は、誰にでもある。

「おケガはないですか」
 と、秋山隊員は、まずきいた。そのあと車の状況を確認して、前輪のうしろに角材などを置いて“足場”をつくった。段差を埋めることで、前輪の駆動が足場にかかる。
「ゆっくりうしろに引っぱって、タイヤが載れば、あとはそのまま車体があがるんです」
 ウインチで引っぱると、車はすぐにあがってきた。

「持ちあげてもらって、こう、下まわりをのぞいて、大丈夫ですねって。隊員さんがまごまごしてるようなら、私も一応プロだから、アドバイスするんです。でも、そういう口出しもしないうちに解決してしまった。そのへんはね、安心して見守れるっていうか、お任せできるっていうかね」

 室井さんは、そうJAFを誉めた。友人にも、家族にも社長にも、仲間のドライバーにも入会を勧めたそうだ。
「温泉とか、美術館とか、割引してくれますしね」
 実は、娘さんも、整備士の専門学校に行っている。

「私の家族会員だったんだけど、抜けたよって。Bライセンス? あれを取ったから、自分で加入しないとって……」
 どうやら娘さんは、お父さんを大好きに違いない。
(写真・文=松尾伸弥)

駆けつけた隊員

秋山謙太 隊員 26歳

甲府基地。
「ありがとうって言っていただける仕事なので、やりがいがあります。困っているひとを助ける。そこは、かなり誇れる仕事だと思います」

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