お客様の声
〜JAF ストーリー〜

128

2016年12月号

タイヤ

チーちゃん

お客様
山下一郎さん(65)、千鶴さん(62) - 大阪府

山下一郎さんと千鶴さんは、知り合って40年、つきあって25年、結婚していっしょに暮らしはじめて10年。その間、いろいろなことがあったが、一郎さんはいまも千鶴さんのことを「チーちゃん」と呼ぶ。仲のよいご夫婦である。

 昨年11月に、一郎さんの運転で、大阪から四国に向かった。一郎さんが徳島出身、千鶴さんが高知出身なのだ。
「23年前に、ふたりで行っとんですよね……で、今回、あとから地図見たら、道、間違うとんですわ、私」
 高知から徳島へ抜けようと県道51号を走っているつもりが、どこかで間違った。
「どえらい道。舗装もなしで、とがった石がごつごつで……」
「のぼっていったら、大きな
落石があって、まったく通れへんようになったもんやから」
「それで、なんとかUターンして、パンクしないように、時速10キロくらいで来よったのに……ガガガガって」
 パンクというより、左前輪のタイヤ側面が裂けてしまっていた。これはもうJAFに電話するしかないと思い、千鶴さんが会員証を出して電話。ロードサービス救援コールセンターにつながった。

「私が最初にパンクですゆうたもんやから、オペレーターさんが、危険防止のためにガードレールから出てくださいって……いやいや、ガードレール出たら崖やし……いや、ごめんごめん、いま高知の山の中なんですって」
 オペレーターがすぐに連絡して、北村真人隊員が現場に向かった。途中の三叉路に工事用の油圧ショベルがあった。北村隊員は、それを目印に県道をはずれ、山道に入った。
 ふたりは、風の音しか聞こえない山のなかで、隊員を待った。

「私、めったにない経験やからって、能天気にしてたんです。ふざけ半分、助けてえッて大きな声で叫んだら、キツネが出てきたんです」
 そのキツネは、ふたりをしばらく見つめ、やがて姿を消した。北村隊員が山道をのぼってくるとき、キツネを見かけたと言った。キツネが先導して隊員を連れてきてくれた、と、千鶴さんは喜んだ。

 車が止まっていたのは、カーブの途中。そこは少し広くなっており、レッカー車は方向転換できた。スペアタイヤは積んでいない。北村隊員は、すぐにけん引の準備をした。が、帰り道にも、とがった岩だらけの場所が数か所あることを、北村隊員は来るときに確認済みだった。
「あちこちの落石が、けっこう鋭利で、レッカー車でもパンクは気になりました」
 落石を避けながら、静かにけん引するレッカー車。高い助手席から崖の下を眺めつつ、千鶴さんは大はしゃぎ。一郎さんが苦笑する。

「私はえらいことになったと顔面蒼白で……そしたら、チーちゃんはね、ニッコニコニッコニコして、落ちこんどってもしゃあないやんって」
 北村隊員は、車をタイヤ店まで運んでくれた。
「翌日、いちばんの目的やった、中学時代の恩師の河野先生に50年ぶりに会えて……」

 遭難もせずに旅を終えたことを、ふたりは感謝している。
(写真・文=松尾伸弥)

駆けつけた隊員

北村真人 隊員 46歳

高知基地。
「困ってる顔が目の前にありますから、なんとかしてあげたいと思うのは、たぶん、どの隊員もいっしょだと思います」

このページのトップへ