お客様の声
〜JAF ストーリー〜

132

2017年5月号

エンジン

さよなら

お客様
清永素子さん(43)、敏雄さん(41) - 熊本県

そのワンボックスカーは、長男が生まれて退院するときに、ディーラーに受け取りにいった。
「臨月のときに、ディーラーさんと打ち合わせをして、ベビーシートをオプションでつけていただいたので、そのまま抱っこして、くるんで、はじめて乗せるみたいな」 

 その長男は中学生になり、次男は10歳。野球の練習で泥だらけの荷物も積んだし、8歳年上の長女もいっしょに、家族で北九州の実家まで何度も往復した。13年乗り続けたワンボックスカーは走行距離15万キロを超えた。
「点検とか半年ごとに出しよったんです。まだまだいけると思いよったんですけど、下の子が4年生で、これからも使う期間が長いので、新しいのに替えようって……」
 家族で話し合って、結局、同じ車種の新型にすることにした。納車まで1か月ほどになった昨年の3月6日。日曜日。部活やバイトもなく、たまたま家族全員が休みになるので、最後のドライブを計画した。ところが、前日の夕方、仕事から帰ってきた敏雄さんが、車が壊れた、と、慌てて家に入ってきた。走行中に警告ランプがつき、自宅の駐車場に入れる直前、すべてのランプが点灯してエンジンが止まってしまったのだ。

「またまたぁ」
 と、素子さんはじめ、子どもたちも冗談と思った。ところが、ほんとだったので、素子さんはディーラーに電話。3月は忙しいらしく、対応できなさそうだった。
「じゃあ、JAFに入ってるから呼んだほうがいいですかって聞いたら、ぜひ、って言われて」

 素子さんはJAFに電話。ディーラーの閉店時間もあるので、再度エンジン始動を試みて、かかるようなら駐車スペースにおさめ、翌日、改めて電話をとオペレーターにアドバイスされた。敏雄さんが駐車場に戻り試してみると、エンジンがかかった。バックして駐車スペースに入れ、エンジン停止。
「これで、ぼくの役割は終わった。そう言ってるように感じました」

 翌朝。JAFに電話すると30分で行けると言われた。長男はその間、車の中にいたいと言った。みんなでスマートフォンやカメラでワンボックスカーを撮った。中野司隊員がレッカー車でやってきた。
「隊員さんは、ただのオーバーヒートではないみたいですって、ボンネットを開けて説明してくださって、運びましょうって……」
 中野隊員はけん引するとき、駐車場の段差を気にした。運転席から降りて、車底部を確認した。

「たぶん廃車にする車やのに、何回もうしろを見て、気をつかってくれて。気配りがすごかった」
 1か月後に新車が来た。その1週間後に、熊本地震が発生。余震が続くなか、素子さんたちは1週間ほど新しい車で車中泊をした。
「前の車のままで地震になって、エンジン止まってたらどうしようもできなくなるから、そういうタイミングも察してたのかな……」

 役目を終えたように眠りについたワンボックスカーを、清永さん一家は、家族のように思い出す。
(写真・文=松尾伸弥)

駆けつけた隊員

中野司 隊員 36歳

熊本基地。
「どんな車でも、JAF隊員なら、きっと同じように扱うと思います」

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