JAFストーリー

Episode135 タイヤが行っちゃう

三橋剛隊員 37歳。厚木基地。

三橋剛 隊員 37歳
厚木基地。
「こうしてほしいとか、何時までにどこに行きたいというお客さまのご希望を、大切にしたいと思います」

Episode135 静岡県●石渡久照さん・62歳

  熱海市にお住まいの石渡久照さんは、奥さんとふたり暮らし。長男家族が神奈川県の茅ヶ崎に住んでいて、昨年の10月10日、幼稚園に通うお孫さんの運動会に行くため、ふたりで車で出かけた。

  中古車を11年ほど前に購入。事故もなく快調に走っていたが、1か月ほど前から前輪シャフト付近の様子がおかしかった。
「ガツガツっていったり、ちょっと運転すると、ガタンガタンと」
  足もとに異様な感覚があった。
「それで、修理工場に1回持ってって……お医者さんにいくと治っちゃうのといっしょで、いっしょに乗って運転してると、そのときには鳴らないんですね」

  だが、その後も症状は出るので、工場に電話をかけ、運動会の翌日に修理に出すことに決めていた。

  10月10日は、朝から異常もなく、茅ヶ崎に向かった。奥さんはエアコンの風をきらって、いつも後部座席に座る。
「ビーチライン通って、真鶴道路を通って、石橋から西湘バイパスに入って、吊り橋のあたりで、音がまた出てきてですね……」
  ハンドルが小刻みに揺れはじめ、さすがに危険を感じた。
「下へ降りて一般道で見てもらおうと思って、箱根のほうに行けばすぐに降りられると思って……」
  コースを左に変更して、小田原厚木道路方面に向かった。

「新幹線のガードを過ぎたあたりで、バキンって音がして、ガクンとなったんですね」

  だが、衝撃は大きくはなかった。
「もし女房が助手席に乗ってたら、完全にガクンといったかもしれないけど、うしろにいたから、バランスよく、いま思うとですね……バキンっていって、タイヤが前に行って、ああタイヤが行っちゃうよって、タイヤが転がっていくんです。呑気っていやぁ呑気だけど」

  なにが起きているかわからず、ブレーキを踏んだ。20メートルほど転がり、左前輪はホイールごと路肩に寄りかかるように止まった。
「タイヤはあっちにあるし、外に出ないでJAFさんに電話しました」
  オペレーターの指示にしたがい、ふたりはすぐに車外へ出て、後方に10メートルほど離れて退避。そのうち、NEXCOの車両が来て、パトカーが到着。
三橋隊員が着いたときには、すでに1車線が安全確保のためにふさがれていた。

「ホイールのボルトが5本すべて折れてました。これはもう、現場で直せる状態ではなかったので」
  けん引の準備をし、三橋隊員は、ふたりに事情を聞いた。
「あとは、奥さまがお孫さんの運動会に行けるかどうかという、つぎのステップを考えました」

  高速道路を出てから最寄りの早川駅で奥さんを降ろし、そこから電車で茅ヶ崎に向かってもらった。
「女房は、閉会式に間に合って、お昼を食べて孫たちと遊べた。ぼくは、隊員さんと熱海まで戻って、途中、世間話をしてくれたので、落ち着いたというかね」
  実はずっとパニック状態だったと、石渡さんはようやく気づいた。

(写真・文=松尾伸弥)

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