お客様の声
〜JAF ストーリー〜

137

2017年11月号

バイク

そんなときに限って

お客様
武田元広さん(62) - 岐阜県

武田元広さんの自宅にある車庫には、手入れの行き届いたバイクが大小6台置いてある。壁ぎわのガラス棚には戦闘機のプラモデルがぎっしりと並んでいる。
「子どもといっしょだって言われますよ。バイク乗って、プラモデルつくって、甘いもん食べて」
 石材職人の武田さんは、休みの日は、必ずバイクをいじって、乗る。かつては14台も所有していたことがあるそうだ。
「邪魔なものはバラして、車庫の2階にあげて。あとは、車庫の脇に2台くらいずつ吊ってました」

 そんな武田さん。昨年10月の天気のいい日に、ぷらりと散歩のつもりで原付にまたがった。
「天気がよかったんですわ。ぷらっといつも行く池田山にね、2時間くらいのコースなんですけど、うんと近所のコースなもんで、軽い気持ちで行ったんですよ」
 2時間、3時間、半日コース、など、いくつか好みの道がある。
池田山は夕景スポットとしても有名で、舗装されていて、コーナーも多く楽しいコースらしい。
「そういう日に限ってね、合羽もなにも持っていかなかったんですよ。天気もすごいよかったんです」

 ところが、あとひとつ峠を越えれば山頂というところで、路面を覆う砂利を踏んだ。後輪がパンク。
「電話が、通じないんですよ。そういうときに限ってね、平日で、車もなんにも通らないんですよ」
 原付のエンジンをかけたまま、半クラッチで押して、なんとか電話が通じるところに出た。

 JAFに電話した。少し時間がかかるが必ず行きますと言われた。
「そこから動いちゃったもんでね、また電話が通じなくなっちゃった」
 少しでも町の方向に近づこうと、原付を押して歩きはじめたのだ。電波はずっとつながらない。
「あとから見たらね、着信履歴は、たくさんあったんですけど。そしたら、そのうち今度、雨が降ってきたんですよ。これはだめだと思って、バイクをはじのほうに寄せて、ヘルメットも置いて。そしたら、すごい雨になっちゃって」
 ずぶ濡れになりながら、武田さんは歩いた。

「遭難するって、こういうのかなって思ったくらいですね」
 雨が降って、あたりは真っ暗。霧も出てきた。どこかで獣の鳴き声もした。さすがに不安になった。側溝に落ちそうになりながら歩き続けた。そのうち、坂道をあがってくるヘッドライトが見えた。
 こんな雨の夜にあがってくる車など、ほかにいるはずはなかった。
「遅くなって、申しわけないです」
 太田隊員は、まずそう言って、乾いたタオルを渡してくれた。
「こっちはビタビタで、雫が落ちるんだけど、助手席にそのまま乗ってもらってかまわないちゅうて」

 大きな積載車で、原付を置いた場所まで戻った。
「バイクを載せるときにも、すごい気をつかってもらって……」
 ありがたかった、と、武田さんは何度も言って、照れ笑いした。
「それからはね、原付にも、ひととおりの工具と合羽は積んでます」
(写真・文=松尾伸弥)

駆けつけた隊員

太田政好 隊員 56歳

岐阜北基地。
「お客さまに笑顔で帰っていただけるように、ちょっとした気づかいを心がけています」

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